いのちを預かる

もう20年も前になるが、スーパーバイザーをお願いしていた中新井先生に「グループホームを運営するということは、いのちを預かることですよ」と言われたのを、最近、折にふれて思い出す。

 精神病院を転々とした後、10数年前にパンジーのグループホームで暮らし始めたMさんは、ここ2~3年、何度も肺炎を繰り返した後、在宅医療や訪問看護を受けながら、日中はパンジーに通っている。入所施設から5年前に地域移行したTさんは、去年胃がんの手術をしたが再発した。そして、私たちは、Tさんの残された時間を、ご家族の協力を得ながら、可能な限りグループホームで過ごしてもらう事に決めた。

もちろん、決めたものの迷いやためらいはたくさんあるし、これからも予期せぬ出来事に思わず立ち止まってしまうこともあるだろう。しかし、協力し合いながら、Tさんの日々を生きる努力に寄り添いたいと思う。そして、このプロセスがいのちを預かることの重みだと思う。

私は、このプロセスを通して、ノウハウではなく「心」を次の世代に伝えたい。