私たちのことを私たちぬきで決めないで
2021年。それは津久井やまゆり園で19人の知的障害者が命を奪われて5年がたった年でした。悲しい事件のあった同じ年に、「知的障害の人のことをもっと知ってほしい。そのために映像で発信したい」の思いを込めて、パンジーメディアは生まれました。
この5年間に、私たちは知的障害者にとって、そして誰にとっても生きやすい社会を創ることができたでしょうか? 残念ですが、答えは「NO!」です。ますます、ひどくなっているように思います。
しかし、そのような状況の中でも、「元気になること」が2つありました。
ひとつは、宝塚市の人権を考える市民の集いに、当事者4人と講演に行った時のことです。タイトルは「伝えたい私たちの思い~地域で自分らしく くらす~」で、2時間の講演でした。しめくくりのあいさつが終わったとたんに、障害者の保護者、学校の先生、主催者など様々な人が、直接感想を伝えに来てくれたのです。当事者と支援者、そしてパンジーメディアの映像を使っての講演が、参加者の心にダイレクトに響いたことを実感してうれしくなりました。
津久井やまゆり園事件と同じ時期に活動を始めたパンジーメディア。5年たって、やっと手ごたえを感じ始めました。
そしてもうひとつ。厚生労働省が計画をしているグループホームの再編をストップさせたい、と当事者と支援者が協力をして署名活動を行い、2カ月間でおよそ7万筆の署名を集めることができました。11月24日、記者会見を通じて広く世間に発表し、厚労省へ署名を提出したのです。
私たちの予測をはるかに超えて、みなさんの協力を得ることができました。ありがとうございました。これからも、当事者運動の原点である「私たちのことを私たちぬきで決めないで」を大切に、知的障害を持つ人たちの思いや暮らしが実現できるよう、積極的に活動をしていきたいと思います。(林 淑美)(2022年2月発行 パンジーだよりN.88より)