散髪に歴史あり

当事者の大川誠さんとグループホーム近くの散髪屋に髪を切りに行った。コロナの関係で、しばらく行けてなかったので、落ち着いて過ごせるか心配だったが、店に入ってすぐに待合のソファーに座り、店長の準備が出来るまで待つ事5分。散髪中も最後までゆっくり座れ、顔剃りもでき、とてもさっぱりした大川さんになった。落ち着いて髪を切られる大川さんを見ると、積み重ねによって得られたものの大きさをしみじみと感じる。 大川さんは10年ほど前に入所施設からパンジーに来た、重度の強度行動障害を持つ人だ。じっとしている事ができず、そこら中をウロウロし、棚や冷蔵庫を開け閉めし、激しい要求があり常にそばにいる必要があった。今でも知らないところでは、一瞬でも座っていられない部分もあるが、経験の中で、色んなことに対して「めど」を持てるようになり、落ち着いて過ごせる場所や状況を増やしていった。 散髪もその一つで、最初は支援者2人がかりでも落ち着けず、すぐに席を立ってしまった。コーラとおやつを買って、髪を切っている間に食べてもらいながら何とか最後まで髪を切れた。 それが回を重ねるごとに、支援者が1人になり、おやつをやめてコーラだけになり、コーラもやめてみたが、落ち着いて座っている大川さんがそこにいた。 散髪に対してすっかり「めど」ができているのだと思う。その安心感を得るまでに積み重ねてきた支援。小さな積み重ねが大きな安心を生む。今後も小さな積み重ねを大切にしていきたいと思う。(野村)
p.s 大川さんのこれまでの人生は、「きぼうのつばさ」でドキュメンタリーになっている。見ごたえのある作品だ。

“ふたりの知的障害者—地域でくらすことの意味”
https://pansymedia.com/broadcaster/32.html