大川さんとエコバック

2010年6月、入所施設からパンジーに来た頃の大川誠さんについて書いた記録に、こんな言葉が多く出て来ます。
「昼食を落ち着いて待つことができない」「視線が合わない」「誘い掛けにあまり興味を示さない」
25年という長い時間を入所施設で暮らした大川さんは当時、日常の様々な場面で、行動やコミュニケーションにおいて困難な課題がありました。
支援者と共同して1つのことに取り組むことや、制止するのではなくルールを一緒に確認することなど、ゆっくりゆっくり信頼関係を築きながら歩んできました。
2021年になり、大川さんが大きく変わらないといけない出来事が起こりました。
レジ袋が撤廃となったのです。昼休みには、コンビニで買い物をし、商品を袋に入れる事が大川さんのルーティーンだったのですが・・。エコバッグにチャレンジです。
最初はエコバッグを渡すと、“なぜこんなバッグがいるのか”といった様子でしたが、次第に自分から壁掛けのエコバッグを持って買い物に行くようになりました。
 また、これまでは汚れたテーブルを見ると、自分の袖でザーッと拭いていた大川さん。誰に言われるでもなく、おしぼりを持ってきてテーブルを拭き、そのおしぼりを厨房まで片付けに行ったときには、支援者全員が驚きました。
入所施設を出た頃の大川さんの様子を振り返れば、本当に大きな変化です。
ちなみに、大川さんは感覚が過敏で、入所施設では衣服も身につけている事がイヤで裸になってしまう事があったそうですが、今では、なんとマスクもできるようになっています。
経験から得た大川さん本人の自信や意欲は、とても大きな変化をもたらせていると思います。
そして、僕は「ルーティーンだから」「これまでしたことがないから」と、大川さんの可能性を狭めてはいけないと、気が引き締まる思いなのです。(北田)